「死にたい」と思ったことがあるあなたへ:ACT(1)

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あなたは「死にたい」に対して正しく対処していますか?

 さて、いきなり質問です。あなたは次のように思ったことはありますか?

「何で私の人生はこんなにも上手くいかないのだろう……周りの人たちはあんなにも楽しそうに生き生きとしているのに、どうして私ばかり惨めな思いばかりしているのか……もう、死にたい…………」

 もし、このような事を思ったことがあるなら、その原因は何でしょうか? 

周囲と上手く関われずに孤立してしまうことでしょうか? 家族からの虐待や友達からのいじめでしょうか? はたまた、長い間苦しんでいるうつ病やパニック障害がそうでしょうか?

 あなたが思うように、これらはあなたを苦しみに陥れる原因の一つです。もしこのようなことが無くなればあなたの苦しみは小さくなることでしょう。しかし、これらはあくまで原因の一つです。これらとは別にもう一つ大きな原因があることにあなたは気づいているでしょうか? このまま読み進める前にもう一度原因を考えてみてください。

 

答えは見つかりましたか? それでは答え合わせをしましょう。

 
答えは、――あなた自身――です。

 
このような言い方をすると、あなたはやっぱりそうなのかと自分を責めて落ち込むかもしれません。もしかしたら悪いのは自分なんかじゃないと怒るかもしれません。しかし、このような反応をしてしまったあなたは少しばかり誤解しています。この誤解を解くために、もう少し詳しく説明しようと思います。

苦しみの原因はあなた自身にある?

 先ほどの「あなた自身」をより適切に言い表すとすると、「あなた自身の思考」と言えます。これはどういうことかというと、「あなたに死にたいと考えさせている物事に対するあなたの考え」があなたを苦しめているということです。このことをわかりやすく説明するために、「多くの人がいる前で話さないといけない」という状況を例として説明しようと思います。

 あなたは今、友人の結婚式に招かれ、もうすぐ始まる祝辞のために手に持った原稿の紙切れを何度も読み返しています。その友人はあなたにとってとても大切な人で、その人のために今日の祝辞の練習を何度も繰り返してきました。さて、スピーチ直前のあなたはどんなことを感じているでしょうか? おそらく緊張しているでしょう。手が小刻みに震えているかもしれません。背中に気持ちの悪い冷や汗をかいているかもしれないです。

 では、同時にどのようなことを思っているでしょうか? 「大切な友達の祝辞で失敗したらどうしよう……」 「頭が真っ白になって何も言えなくなったら……」 「自分の他にもっと適任者がいたのではないだろうか……」

 「あなたに死にたいと考えさせている物事に対するあなたの考え」というのはこのような祝辞に対して思ったこと(あなた自身の思考)を指し示しています。こういった思考はあなたに必要以上なネガティブな感情を引き起こします。ここで一度、あなたが祝辞に対して感じたことを見直してみてください。手の震えも冷や汗も全て緊張に帰結していることが分かります。

 しかし一方で祝辞に対する思考を見てみると、「失敗」、「頭が真っ白」、「自分以外の適任者」など、あるかどうかも分からない要素が現れてきています。このようにただの緊張の原因であったはずの祝辞があなたの感情や思考によって大きな不安を増幅させます。このことを心理学のACTという心理療法では、関係フレーム理論(RFT)という考え方に基づいた良くない考え方としています。

 これからこのACTという最新の心理療法に基づいて、あなたの「死にたい」という大きなものから、「何となく気分が乗らないな……」という小さなものまで扱っていこうと考えています。しかし、この心理療法は苦しみを消し去るような魔法ではなく、苦しみと一緒に生きていくという考えですので、読み進めていく内に「私が求めているものと違うのではないか」と思うこともあるかもしれません。そのように思ったときは、ぜひその反感を大切にしてACTに対して向き合ってみて下さい。あなた自身でACTについて調べてみても良いですし、このサイトへ質問してもらっても構いません。しかし、ACTは多くの研究で心理的問題に対する効果が実証されており、多くの研究者に支持されている心理療法ですので、あなたの心理的問題に対して何かしら解決のヒントを与えることができると思います。

 あなたは今まで、あなたに死にたいと思わせていたことに対して幾度となく悩み、苦しみ、そして追い詰められてきたのではありませんか? そして、死にたいという苦しみを何とかして取り除こうとして必死になっていたのではないでしょうか。
 このあたりで少し立ち止まって、少し今までと違った視点からあなたの苦しみを見つめてはみませんか?

 この記事では、「ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)をはじめる (著)スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス 星和書店出版」を参考にしています。