ACT(Acceptance and Commitment Therapy)とは?:ACT(2)

  • 2017.05.20
  • ACT
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ACTとはどのような心理療法なのか?

 前の記事で、これからACTという心理療法に基づいてあなたの苦しみを対処していこうとお伝えしましたが、まずはACTについて大まかに説明したいと思います。この記事では、ACTというものがどのようなもので、それがどのように苦しみに対して作用するかをお伝えします。

 ACT(Acceptance and Commitment Therapy)とは、心理療法一つです。
 心理療法にはACT以外のものももちろんあるのですが、多くの心理療法は大きく「苦しみを取り除く心理療法」か「苦しみを受け入れる心理療法」の2つに分けられます。
では、ACTはどちらの心理療法でしょうか? 前の記事から続けて読んで下さっている方ならもう気づいていることと思います。まさしくACTは「苦しみを受け入れる心理療法」であり、あなたの苦しみの原因となる「あなた自身の思考」に対する直接的な取り組みを提供しているのです。
 そのACTの取り組みは大きく、「マインドフルネス」、「アクセプタンス」、「コミットメント」の三つに分類されます。次はその三つの取り組みについて簡単に説明しようと思います。

ACTの三つの取り組みとは?

①マインドフルネス

 マインドフルネスとは、「自分の体験をそのまま見る過程」のことを指します。これは遙か昔から東洋で受け継がれてきたもので、瞑想といった形態などで現代に伝わっています。瞑想と聞いて、お寺などでお坊さんが長い時間座禅をしているところを想像した人もいるのではないでしょうか? 実際にマインドフルネスの根底には原始仏教の考え方が流れています。
 このマインドフルネスの技術を正しく学ぶことによって、あなたは最終的に「自分の思考から」物事を見て苦しみにとらわれるのではなく、「自分の思考を」見て客観的にあなたの苦しみをとらえることができるようになります。

②アクセプタンス

 アクセプタンスとは、「苦しみをあるがままに受け入れること」を指します。これは、「苦しみがなくなれば良いのに」と思われている方にとっては衝撃的な言葉だと思います。後々詳しく説明しますが、私たちが人である以上は苦しみというものを完全に取り除くことはできません。しかし私たちが苦しみの原因である苦しみを受け入れる(アクセプトする)ことで、その影響を最小限に抑えることができます。またその受け入れは決して「苦しみは受け入れなければならないもの」という諦めや我慢とは違って、ありのままの苦しみを積極的に受け入れることを指します。今の段階ではアクセプタンスについてあまり理解できないかもしれませんが、ひとまず今は、アクセプタンスは決して苦しみを我慢するものではないということを心に留めておいて下さい。

③コミットメント

 コミットメントとは、「自分にとっての価値ある人生を自覚し、それを現実のものとすること」を指します。これは、マインドフルネスやアクセプタンスとは違って、苦しみに対する対処とは少し違ったものですが、あなたの人生をより良いものとするには欠かせない技術です。仮にあなたが今苦しんでいることが全てきれいさっぱり無くなったとしましょう。そのようになったとき、あなたは生き生きとした人生を歩める自信はありますか? もちろん自信を持ってYesと答えることができる方もいるとは思いますが、そうでない方もいると思います。「私は何のために生きているのだろう?」 「人生に意味なんてあるのか?」
 こういった問いに対して何かしらのヒントを与えてくれるのがコミットメントなのです。

これからACTをお伝えしていくに当たって

 これからACTの考え方や苦しみに対する具体的な取り組みをお伝えしていきますが、一つあなたに注意しておくことがあります。それは、記事を読み進めるに当たって「できる限り思考や感情にとらわれないようにする」ということです。これはACTの中でも特に「マインドフルネス」に関係することであり、「思考を」見るのではなく、「思考から」見ることに繋がります。しかし、人がついあれこれ考えてしまうことはごく当たり前なことでもあります。そんなときはそのように思っていることに「気づいて」下さい。気づくことによってその「思考を」見ることができます。

 これからの記事では、最初にマインドフルネスについてお伝えしていこうと思います。それ以降はアクセプタンスかコミットメントのどちらを先に扱うかはまで未定です。まずは、「思考から」見るのではなく、「思考を」見ることができるようにしましょう!

 この記事では、「ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)をはじめる (著)スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス 星和書店出版」を参考にしています。