「思考から」見てしまう危険性とは?:ACT(4)

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 それでは、この記事から本格的にACTに取り組んでいきます。まずはマインドフルネスからです。

 以前の記事でもお伝えしましたが、マインドフルネスとは「自分の体験をそのまま見る過程」のことを指します。そして、マインドフルネスを実践するには「思考から」物事を見るのではなく、自分自身の「思考を」見ることが必要となります。そこで、まずは今回の記事でそれら2つの違いを説明し、次回の記事からマインドフルネス実践の仕方をお伝えすることにします。

思考自体は悪くない!?

 思考に関する2つの見方の違いをお伝えする前に、まず思考そのものの前提をお伝えしておく必要があります。それは、思考そのものは悪いものではないということです。これまで「思考から」見ることは良くないとお伝えしてきたので、何となくそれ自体が悪いのではないかという印象を受けた方もいるかもしれませんが、実際には思考は人類が獲得した有用なものの一つであるのは疑いようのない事実です。では、なぜ「思考から」見ることが良くないことなのでしょうか? ここでは、私たちがそれをどのように用いるかが重要となってくるのです。

2種類の思考

 思考にはネガティブな感情を引き起こすものとそうでないものがあります。その違いを簡単な例を挙げて説明します。

Ⓐ計画・予定・作業手順など
 旅行の計画を立てるとします。その時には思考を働かせることになります。もし何も考えないとすると、いわゆる行き当たりばったりな旅行となってしまいます。よってこのような場合には思考は上手く働きます。

Ⓑ物事に対する不安など
 以前の記事でも例として挙げましたが、結婚式のスピーチで失敗することを想像するとします。この時にも考えるという行為をしています。しかし、その考えは役に立たないばかりか、むしろ不安を大きくさせています。よってこのような場合には思考は上手く働きません。

 このように、ⒶとⒷの例を見ていただくと分かると思いますが、思考は常に私たちにネガティブな影響を引き起こすわけではありません。その2つの違いに影響しているものは私たちの思考の使い方ということになります。

そもそも「思考を」見るとは?

 さて、前々から「思考から」物事を見るのではなく、自分自身の「思考を」見ることが大切だとお伝えしてきていますが、その2つの違いを詳しく説明していなかったのでここで説明しておきたいと思います。

 まず思考から」見ることですが、これは普段私たちがしがちな、いわゆる「物事を悪く考える」ことが挙げられます。度々例として挙げますが、結婚式のスピーチがこれに当てはまります。失敗するのではないか、周囲の人たちから変な目で見られるのではないか。このように考えることを「思考から」見ることと呼び、これは元々存在する不安を増大させ、私たちの時間や体力を奪います。

 次に思考を」見ることですが、これは元々ある不安などのネガティブに感じていることを、ただ「見つめる」ということを指します。例えば、結婚式のスピーチという状況があり、不安を感じているとします。しかし、ここで違うところは、失敗することや周囲から変な目で見られることを想像したとしても、そのことに捕らわれないということです。そうすることであなたを苦しめるものの影響を最小限に抑えることが出来ます。

このように、これら2つの見方にはちょっとした違いしかないように見えて、実は大きな違いがあるのです。

マインドフルネス実戦に向けて

 さて、以上でマインドフルネス実践の前置きは終わりとなるのですが、その前に1つだけ確認しておくことがあります。それは、「思考を」見ることは、決して「考えないように」することではないということです。もしネガティブな想像が浮かんでもそれを考えないようにしようとすると、結果的にはそのことを意識していることになるのです。

ここまで読んできて、「思考を見ることは自分には無理なのではないか……」。そのように思われる方も少なからずいると思います。しかし、ACTは実践を大切にしている心理療法ですので、前回のようなエクササイズを通して身をもって体験してもらうことで分かってくることも数多いのです。それでは次回の記事から、実際にマインドフルネスを体験して行きましょう!