【ゲーム理論】複数のナッシュ均衡とコミットメント

【ゲーム理論】複数のナッシュ均衡とコミットメント

さて、ゲーム理論では、相手の戦略を決めてから、自分の各戦略の良し悪しを判断していきましたね。そしてゲーム理論の要点を分かりやすく。ナッシュ均衡編。では両者がお互いに相手の戦略に対して最適応答を行ったときの状態をナッシュ均衡であると説明しました。ナッシュ均衡は相手の複数の戦略のうちの一つの戦略に対しての最適応答を返すため、当然ナッシュ均衡は複数あることもあります。今回はそんなケースを見ていきます。 

ナッシュ均衡は複数あっていいのか。

ゲーム理論を習いたての頃は多くの人がナッシュ均衡は一つしかないと勘違いしてしまいます。おおよそ、囚人のジレンマからこのゲーム理論を学ぶことが原因でしょう。囚人のジレンマでは、両者がお互いの二つの戦略に対してそれぞれ最適応答をした結果、たまたまお互い、すべての戦略に対して、「自白」の戦略が最適応答になってしまった状態となっています。この、「すべての戦略に対して一つの戦略が最適応答になる」戦略を何というんでしたっけ、、、 

 

そう、支配戦略ですね。 

 

ナッシュ均衡は別にこの支配戦略を必要とはしないのです。ただ、両者のある戦略に対する最適応答が重なりさえすればオーケー、ナッシュ均衡の完成なのです。しかし、ここで注意です。支配戦略によりできた状態は必ずナッシュ均衡となっています。つまり支配戦略はナッシュ均衡を呼ぶが、ナッシュ均衡は支配戦略を呼ぶわけではないということです。逆は必ずしも真ならずといったところでしょうか 

複数のナッシュ均衡の具体例

では、ナッシュ均衡が複数ある場合を考えるために、次のケースを考えてみましょう。 

 

あなたは悪友のマイケルと難波のキャバクラへ行きました。マイケルとあなたは、それはもうウハウハと飲みまくりサービスされまくりで幸せの絶頂でした。最高ですねぇ。しかし、こうなってくると金の方が心配です。あなたは大学生の設定ですし(今しました)今月は生活が苦しいんです(今設定しました)。しかし、マイケルだって散財の毎日で今月は特に金がありません。こんな大出費はお互いしたくありません。とはいえお互いに支払わなければ豚箱入りは確実ですね。怖いおじさんたちに連れていかれかねません。当然今回はおごってもらいたいところです。このゲーム的状況であなたはどんな戦略をするのでしょうか。 

 

さて、この状況をゲーム理論の表にしてみましょう。 

複数ナッシュ均衡複数のナッシュ均衡の図

赤丸がマイケルの「支払う」と「支払わない」という戦略に対するあなたの最適応答です。そして同様に緑丸がマイケルの最適応答です。どちらかが支払って、どちらかがおごってもらうというナッシュ均衡が二つできたことが分かったでしょうか。ゲーム理論から言うと状況はこの2パターンに収束します。しかし、この場合どちらに収束するかは不明ですね。そんな時に一つの解決策を与える戦略が、コミットメントです。 

コミットメントー強烈な戦略ー

コミットメントとは、あるプレイヤーがこれから自分の行う戦略を宣言し、それを実行することです。つまり、この例では 

 

Mr. マイケル「あーーー漏れそうwトイレ行ってくるわ!w」 

嬢「やだ~~w」 

あなた「もーくせえよwはよブリブリしてこい!w」 

~1時間後~ 

ボーイ「お会計でーす」 

あなた「」 

 

といった感じですね。まあこんな例じゃなくてもマイクが「帰る。払っといて。」と言って逃げればコミットメント成立です。この場合、あなたは支払わざるを得ないわけですから、上の表でいうと(-10,0)の状態。まんまとマイクにしてやられてしまったというわけです。 

このコミットメント戦略は現在の状況に対して有利に出るという点においてはこのように強力な効果があるのです。もっと身近な例だってあります。僕が最近見たクソみたいなラブコメアニメではこぞって一人の男に対して複数の女が群がってしょうもない恋愛展開を見せてました。「私は、○○君が好き。今日、告白しようと思うの。」と言った感じに。どうしたらそんなありきたりで幼稚な劇を何回も連載する気力が出てくるのでしょうか。そういえばまどマギでも同じようなことがありましたねぇ。まあそれは置いておいて、この例では、一人の女の子が、先に告白すると宣言することによって、他の女の子は安易に○○君に手が出せないわけです。かくしてこの女の子は他の人たちより有利なゲーム運びをしたといえるでしょう。このように身近な例からもこのコミットメントの、先に行動することによって状況が有利に運ぶことができるという示唆に気付いていただけたと思います。 

本日のまとめ

・ゲーム理論において、複数のナッシュ均衡はなんら不思議なことではない。 

・支配戦略はナッシュ均衡を呼ぶがナッシュ均衡は必ずしも支配戦略を呼ばない。 

・コミットメント戦略はゲーム的状況で強力な先手必勝戦略。 

 

それにしてもこのゲーム理論は非常に面白いですね。現実の活動を数学的に実数化して解釈ができるのですから。数学的に実数化して解釈するとは、大小が分かる(=推移性)、連続的な数値があり得る(=連続性)、二倍にしたり、引いたり、四則演算ができる(=四則演算の成立)数値を仮定して対象を把握することです。このゲーム理論、僕たちの複雑なように見える生活を非常にはっきりと論理的に判断できるといった点、強烈な魅力を感じるものでございます。