【行動経済学】プロスペクト理論を応用してリスク回避度を求める。

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確実性等価額と参照点の関係

ここからは、上で出した二つのくじの場合の確実性等価額と、僕のリスク回避度の場合の確率性等価額を求めていきます。恐らく聞きなれない「確実性等価額」と「リスク回避度」という言葉が出てきたのでその説明を先にします。リスク回避度は何回か出してたけど気にしない。

確実性等価額とリスク回避度の意味

確実性等価額とは、不確実性の資産の値段と同じ価値を感じられる確実性の資産の値段のことです。またリスク回避度とは個人の不確実性に対する嫌いの程度のことです。今回、2番のくじの効用と1番のくじの効用では大きな差があることが分かりました。では、2番のくじで確実にもらえる金額が16万円ではなく、何円ならば1番のくじと同じ程度に選ばれるようになるのでしょう。この考え方こそが、経済学を少し勉強したことのある人なら聞いたことがあるかもしれませんが、確実性等価額という考え方です。そしてこの概念は完全にプロスペクト理論で扱っているものと同じなんです。また、確実性等価額が分かればリスク回避度が分かります。今回の例ならば、2のくじの価格設定が確実性等価額となり、あなたなら2のくじの価格が何円程度なら1のくじと釣り合うの??という考えがリスク回避度となるのです。

例1の価格設定の場合の確実性等価額と僕の価格設定の場合の確実性等価額の算出

例1と条件は一緒で、確実性等価額のみxという変数とすると、
$$(20万円-x円)×0.8=x円-{(20万円-x円)×0.8}$$
という式ができます。 *2
*2. 2のくじの価格をxとして、式①と式②を「1のくじの効用=2のくじの効用」となるように組み合わせた。
これを解くと
$$x=12.31万円$$
となります。
この12.31万円というのがプロスペクト理論から求まった確実性等価額となります。この確実性等価額を関数②
$$Y=(2x-\frac{2}{λ})-x^2$$
に適用すると、
Y=期待効用 より、Y=16万円
よって、
$$16万=(2×12.31-\frac{2}{λ})-12.31万^2$$
λ=-0.01399となります。 *3
*3. 期待効用関数の式には確実性等価額と期待効用のみをパラメータに使ったものと、リスクやリスク回避度をパラメータに使ったものなどがあります。
リスク回避度がこれだと分かれば、一番最初に示した関数①$$y=U(m)-\frac{1}{2}λσ^2$$に代入してあげれば自分の期待効用が分かり、期待効用関数の決定がようやくできるわけです。
また、この確実性等価額はリスク回避度によって決まるため個人が決められるものです。確実性等価額をぼくが選んだ場合、11万円になりました。11万円だったら、リスク回避度はλ=-0.01739になりました。さて、この誤差はいかほど大きいものなのか。判断してみましょう。

仮説は検証されたのか

そもそも誤差の判断とは自分の目的によって変わってきます。僕の目的というのはアセットアロケーション計算というものです。簡単に言うと、資産の配分比率を決める計算のことで、自分のリスク回避度に応じて資産の配分比率が変わってくるという性質を持ちます。説明のために僕が投資したかった銘柄の名前をそれぞれ銘柄Aと銘柄Bとしましょう。これを解くと、まず12.31万円を確実性等価額としたリスク回避度、λ=0.01399の場合は投資比率がそれぞれ71.4%、28.6%でした。そして自分で決めた確実性等価額11万円としたリスク回避度、λ=0.0179の場合は投資比率がそれぞれ71.7%、28.3%となりました。この程度の誤差ならば僕の投資比率に違いはほとんど生まれません。そのため許容できる誤差であった。という結論に至りました。

プロスペクト理論応用の説明の終わりに

今回は聞きなれない経済学用語がたくさんあって非常に難しかったのではないでしょうか。いろいろ納得できない部分などあるかもしれませんが、今回僕が行った「仮説を立てて検証してみる」という流れはまさしく実験といえます。このような実験は自分の理解を非常に深め、さらに有用な知識をもたらしてくれます。今回は僕がやったように他の人のリスク回避度の誤差も同じように測定できるのでは?という示唆を与えられたと思います。しかしながらやはり期待効用関数にしてもプロスペクト理論にしても事態はここまで単純ではありません。みなさんも自分でこれらの理論を勉強し、早速検証してみてはいかがでしょうか。

引用文献

Reilly, F. K., & Brown, K. C. (2011). Investment analysis and portfolio management. Cengage Learning.

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